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鬼貫句碑めぐり


月花を 我が物顔の 枕かな



鬼貫
の240年忌の記念として、昭和53年中央2丁目に大きい自然石の句碑が建てられましたが、昭和60年現在地に移されました。
「前に酒家ありて菊のしたたりを流し、後ろに松高うして古城のむかしを見す、おにつ羅」『月花を我が物顔の枕かな』
この句をしたためた「古城懐紙」は、柿衞文庫の所蔵となっています。酒造業のもたらした豊かな財力に支えられて酒造業の旦那衆たちを中心に俳諧が盛んになりました。また、伊丹の芳醇な美酒の香りに誘われてか、伊丹を訪れる文人墨客も数多く、伊丹は文芸の花咲く町となりました。前の句は、このような時代を背景として作られたものと思われます。酒造家が軒を並べ、有岡の古城には松の木が亭々として高く生い茂っている風景をうたいあげた鬼貫の代表句の一つです。なお、碑陰には柿衞翁岡田利兵衛氏の格調高い撰文が刻み込まれています。







にょっぽりと 秋の空なる 富士の山




昭和38年、株式会社住友銀行が建立した高さ150センチメートルの石碑で、熱海根府川と四国の西条から取り寄せた名石から制作したものです。
「大悟物狂(だいごものぐるい)」によりますと貞享3年(1686)6月、仕官の為初めての江戸行きに胸躍らせて俳諧の友、古沢鸞動(ふるさわらんどう)を訪ねました。病床の鸞動は、みやげには是非富士の句を≠ニ望みましたが、鬼貫の帰りを待つことなく世を去りました。嘆き悲しんだ鬼貫はその霊前に佇んで、生ける人に語るかのように約束の句を捧げたのです。このとき鬼貫27歳。  碑面の文字は、後年、別号佛兄(さとえ)の名で書いた句一行物(柿衞文庫所蔵)の鬼貫の真蹟からとったものです。この句碑のある場所は、鬼貫の宗家、三文字油屋本家居宅の跡といわれております。西宮神社境内には、鬼貫のこの句と並べて、芭蕉の「はるもやヽけしきとヽのふ月と梅」を彫り込んだ句碑があります






秋ハ物の 月夜烏は いつも鳴


句碑は墨染寺の境内にあり、その横には鬼貫と6歳で没した鬼貫の長男永太郎の墓があります。
碑陰に「弘化二年(1845)巳八月梶曲阜建立」の銘文が刻まれています。
句意は「秋はなんとなくもの悲しい。月夜に鳥がいつも鳴いている」





骸骨の 上を粧て 花見哉




この句碑は遍照寺の境内にあります。
梶曲阜が建立した句碑で、高さ163cmの砂岩切石で弘化4年(1847)秋9月に建立したものです。享保3年(1718)鬼貫58歳の作といわれ、梶曲阜は「仏兄(さとえ)翁記」のなかで、この句を絶賛しています。
句意は「着飾った人々が、花見にうかれているが、しょせん中身は骸骨にすぎない」と人生のはかなさを詠んでいます。
その句碑に対応して、鬼貫の一族だった俳人「机月」が鬼貫を偲び詠んだ「青梅は その骸骨の みのり哉 机月」の句碑が平成16年9月に建立されました。







鳥ハ未 口もほどけず 初桜




猪名野神社の境内、本殿西側に建てられています。高さ136cmの大きな自然石でできています。
建立は嘉永7年(1854)秋で、碑には酒造家で俳人の山口太乙、岡田糠人、梶曲阜と陰刻されています。






古城や 茨ぐろなる 蟋蟀(きりぎりす)




句碑は荒村寺の境内にあります。
高さ158cmで慶応元年(1865)梶曲阜、山口太乙、岡田糠人によって建てられました。
この句は「大悟物狂」や「仏兄七久留万」に載り、「有岡の昔をあわれにおぼえて」の詞書がついています。三池藩立花家から伊丹に帰った鬼貫が有岡城跡を訪ね、茨の茂みに蟋蟀が鳴く侘しい光景に心うたれて作ったといわれています。






月はなし 雨にて萩は いほれたり




左が鬼貫の句。右は大高子葉の句「かく山を 引ッ立てて咲 いおに哉」が刻まれています。
子葉は赤穂浪士討ち入りの元禄14年(1701)秋、鬼貫宅を訪れ、一泊したときの句です。山を際立たせるように咲いている紫苑に鬼貫を例えています。これに対して鬼貫は、今夜は月もなく、雨にしおれた萩に子葉を例えています。






行水の すてところなし 虫の声




句碑は伊丹小学校の校庭の南側に建てられています。上部に彫り込まれているのは与謝蕪村筆の鬼貫翁の姿です。
鬼貫は武士の家に生まれ、武士であることにこだわり続けていました。俳句は鬼貫にとって、余技でしかなかったようです。
句意は夏も終わりに近づき、そこはかとなく秋の気配が漂うようになった。昼間の汗を流そうと行水をしていると、辺りはすべて虫の声に満ちている。さて、行水の水をどこへ捨てて良いものか…。
現代の街中で行水風景をめったに見ることは出来ませんし、虫の声も自動車の騒音にかき消されています。昔の夏の風情が思い起こされる句です。







月はなくて 昼は霞むや こやの池




句碑は昆陽池公園内に建てられています。
時期は仲秋(今の九月)。句意は「夜ではないので名月は出ていないが、昆陽池は大池だから、昼もあたり一面におぼろに霞んでいて、周囲も定かでないほど」。








おもしろさ 急には見えぬ すすき哉




句碑は緑ヶ丘公園内の休憩所の横、静かな場所に建てられています。近くの池のほとりにはすすきが見られます。
「誠のほかに俳諧なし」と、作意を捨てて、物そのもののありのままの姿を見つめ、素直に自然を詠むことを追い求めた鬼貫らしい俳句といえます。
句意は「すすきは静かにじっくりと見ていてこそ、そのおもしろさを感じることができる」





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