トップページ
 
 


伊丹市 北村水源池(北伊丹5丁目)
 

 旧西国街道がJR福知山線を渡り、猪名川堤防につき当る手前に伊丹市北村水源池がある。市内に上水を供給している現役の施設であり、現在は昭和37(1962)に建てられた瀟洒な平屋の設備棟がある。
伊丹は地下水に恵まれ酒造が盛んであったが却って上水道の建設は遅れ、給水開始は昭和11年(1936)である。ほとんどの井戸が飲用に適さない尼崎がすでに大正7年(1918)に上水道による給水を開始していたのと対照的である。
 当時上水道建設にあたり実施した調査の結果、猪名川沿岸に潜流する伏流水が水量が豊富で水質もよく、これを水源とすることが適当との結論が得られた。伏流水を汲み上げる水源井は北村字南田台坊(でんだいぼう)に設けることになった。
 ところが猪名川から取水する伊丹・尼崎の各井組は、これが灌漑用水に影響するのをおそれて苦情を持ち込んだために事は難航した。そこで毎年6月から9月までの用水期には水利関係者の必要に応じて、伊丹町は上水道に使用するのと同量の水を鑿井(さくせい)によって関係井の猪名川上流に放流すること等の条件で折り合いが付き、ようやく事業が進展するに至った。昭和11年に給水を開始したが、初年度の上水の普及率は全戸数の27%に過ぎなかった。

※鑿井:地下水を採取・探査するため井戸を掘ること。(ボーリング)
             ―伊丹市史第三巻参照―                              

(松田 記)
 
場所:猪名川堤防辺り

 
 
目次